審査状況伺書


特許庁で審査中の特許や商標について、なかなか特許庁から連絡(拒絶理由、若しくは特許査定)が来ない場合があります。

一体、審査はどうなっているの?早く知りたい!と思うと思います。

その場合、「審査状況伺書」という書面を特許庁に提出することで、審査の状況が現在、どのような状況であるかが分かります。

特許庁のホームページ(→コチラ。2018/1/29現在)にアクセスすると、提出方法が詳しく記載されています。

商標だけは電子メール(というか、ネット上の問い合わせフォーム)から審査状況を問い合わせることができるようになっています(特許も同様にしてほしいところですが…)。

とはいえ、「審査状況伺書」を提出しても、早期審査等を利用していない限り審査が早まるわけではありません。

しかし、審査官にも「審査状況伺書」が提出されたことについて連絡が行くようです。

以前、とある特許の案件で「審査状況伺書」を提出し、電話で審査官と話したことがあるのですが、その際、「伺書を提出されており、重要な案件なのですね。」というようなことを言われたことがあります。

審査が早まるわけではないですが、審査官の注意を向ける、という点では「審査状況伺書」はそれなりに有効かもしれません。

今知的財産事務所

特許は技術的アイデアを、著作権は具体的表現を守る

 
ときどき、「自分のアイデアについて書類にまとめているから、このアイデアは著作権で守られていますよね?」というようなことを尋ねてくる方がいます。

これは大きな誤解で、アイデア自体は著作権法で守られることはありません

著作権の保護対象は「著作物」ですが、「著作物」は、その人が自分の思想や感情をこめて具体的に「表現したもの」であり、思想や感情自体、つまりアイデア自体は著作物ではないからです。

上の例で言えば、アイデアについてまとめた「書類に表現されたもの」は著作物になり得るので、例えば、その書類に記載した文章を誰かがコピペ等してマネをしたら著作権侵害を問える場合がありますが、アイデア自体を誰かが使っても著作権侵害を問うことはできません。

例えば、京都地裁の裁判例に「アンコウ行灯事件」というものがあります(平成6(ワ)2364)。

以下、判決文の抜粋です。

 「(中略)「表現形式上の本質的特徴」は、それぞれの著作物の具体的な構成と結びついた表現形態から直接把握される部分に限られ、個々の構成・素材を取り上げたアイデアや構成・素材の単なる組み合わせから生ずるイメージ、著作者の一連の作品に共通する構成・素材・イメージ(いわゆる作風)などの抽象的な部分にまでは及ばないと解するべきである。
(中略)
・・・原告は、原告の著作物の表現形式上の本質的な特徴は、いわゆる従来の「火もらい」とは異なるデザイン重視の容器を製作し、さらにその容器内部に液体を満たして、その表面上に発光体を浮かべて、一体のものとして幽玄な空間を表現している点に存する旨主張するが、こうした点は個々の著作物を離れた抽象的なアイデアに属するものであり、右の点の類似のみを理由として著作権侵害の有無を論じることはできない。(以下略)」(下線は筆者が付与)

つまり、「容器を製作し、さらにその容器内部に液体を満たして、その表面上に発光体を浮かべて、一体のものとして幽玄な空間を表現」するという抽象的なアイデアに類似していたとしても著作権侵害ではないということです。

したがって、アイデアを保護したい場合、技術的なアイデアは特許、外観デザインに関するアイデアは意匠というように、著作権以外の知財で対応する必要があります。

ただし、技術的なアイデアでもなく、外観デザインにも関係しないアイデア等については、そのアイデアをそのまま保護することができない場合があります。

そのような場合、そのアイデアを何に使うのか、どう使うのかというそのアイデアを使う具体的シーン等を検討したうえで、間接的に特許法、意匠法、商標法、あるいは著作権法や不正競争防止法で対応できないかを考えることになります。

なお、上記の判決文の記載、特許請求の範囲っぽくなっているのが面白いですね。

今知的財産事務所

早い段階から足固め

 
スタートアップのみならず、新規事業検討時には「アイデア」があっても、まだ具体的なモノやサービスができていないことが多いと思います。

このような時点から「知財」の目を持っておくと、将来的に知的財産権を取得しないまでも事業にとって有益な武器が自社内に蓄積していきます。

それこそが「知財」なのですが、何を言っているかというと「知財」は目に見えるものではなく無体物です。無体物を第三者に説明する場合、どうしても「見える化」する必要があります。

その「見える化」、言葉で表したコンセプトであったり、アイデアスケッチであったり、事業計画書であったり様々ですが、言葉や文章、そして図等で表現するからこそ、第三者にも自分のアイデアがいかに良いかを説明できるようになります。

この「見える化」したアイデア、そのまま放置しておくとどうなるでしょう?

そのアイデアが良いものであればあるほど、マネしたくなる人が出てくるでしょう。

もちろん「どんどんマネして、世に広めてください」という考えもあります。

しかしこの考えには大前提があると思います。それは、「マネする人すべてが自分と同じ考えである」ということです。

マネする人の中に、そのアイデアを応用したモノやサービスについて特許権等の知的財産権を取得し、その人がその応用したモノやサービスについて独占し、第三者の実施を排除したとしたらどうでしょうか?しかも、そのような人が多く出てきたらどうでしょう。

特に先進的なアイデアであればあるほど、そのままでは市場に出せないことが多く、市場に出すために様々な工夫をする必要があります。その工夫をした内容について知的財産権が取得され、第三者の実施を排除する力が働いたとしたらどうでしょう。

そうなると、考え出したアイデアについて世に広めたいがために権利を取得しなかったのに、そのアイデアを応用したモノやサービスについてどんどん権利が取得され、応用したモノやサービスを更に応用することに対して障害が生じ、結果としてそれほど広まらない、ということも起こらないとは限りません。

ではどうするかというと、考え出したアイデアについて何らかの知的財産権を確保しておくことが必要です。

特許権等は「独占排他権」ですが、「独占排他権」というと他の人を排除するイメージが強いためか毛嫌いする人がいますが、「権利は使いよう」です。

権利を取得したうえで、その権利をリーズナブルな値段で利用してもらうか、ライセンス料をもらわないまでも権利の使い方をコントロールする(例えば、権利を自由に利用して応用したモノやサービスについて特許権等を取得してもよいが、第三者にリーズナブルな値段で利用させること、というような縛りを付ける等です。)ことで、自分のアイデアを世に広めることを制御することもできます。

もちろん、知的財産権を確保しておけば、自社のみがビジネスする際において強力なツールになります。

結局、「知的財産」は「財産」ですが、「財産」として価値が出るのは「使ってこそ」です。その「使い方」をどう制御するかが重要になってきます。

今知的財産事務所

新規性


特許、実用新案、そして意匠ではそれぞれ、発明、考案、そして意匠が新しいこと、つまり新規であることが必要です。いわゆる「新規性」が要求されます。

したがって、発明等の場合、世の中に知られてしまうと新規性がなくなり、新規性喪失の例外の適用を受けない限り「新規性なし」として権利を取得することができなくなるので、公表前に出願する必要があります。

一方、商標ではネーミング等の標章に「新しさ」は必要とされていません。

標章(ネーミング等)は、いわゆる「選択物」と考えられています。つまり、既に世の中にある言葉等から自分が使いたいものを選ぶ、ということです。そのため、「新しさ」が要求されません。

また、商標は業務上の信用を守ることが大きな目的の一つですが、業務上の信用は業務をしない限り生じてきません。つまり、標章を使えば使うほど、標章に接した人々(需要者)に「信用」が溜まっていきます。そのような商標にこそ保護価値があると考えられていることも「新しさ」が要求されない理由の一つになっています。

そのため、商標登録出願前に自分が考えたネーミングを世の中に出しても、それだけで商標権が取れなくなることはありません。

ただし、商標も特許等と同じように「先願主義」を採用しています。

したがって、自分が考えたネーミングについて商標登録出願する前に発表してしまうと、第三者がそのネーミングを先取り的に商標登録出願し、せっかく考えたネーミングであっても自分が商標権を取得できなくなる場合もあります。

「新規性」を要求はされないものの、第三者の先取り的な出願のリスクを考えれば、やはり発表等により公にする前に手を打っておく必要があります。

なお、先ほど「選択物」といいましたが、最近は造語やデザイン化されたロゴもかなり多くなってきており、中には「いままでなかったネーミング」や「いままでなかったデザインのロゴ」を考えて商標登録出願する例も多くなっています。

そういった場合、単純に「選択物」として考えてよいのか?ということもありますが、現在のところそのような造語やロゴであっても、やはり新規性は求められておらず、「早い者勝ち」になっています。

商標では新規性は求められませんが、第三者による先取り的な出願のリスクを考えたら、公表前に出願することが大切です。

今知的財産事務所

早期審査と早期審理

 
特許権をなるべく早く取得したい場合に利用できる制度が早期審査です。

早期審査については以前のブログでも記載しました。

早期審査をかけても、特許出願の内容によっては拒絶査定になることもあります。

拒絶査定になっても「拒絶査定不服審判」で争うことができ、この審判でOK(特許審決)が出れば、特許権を取得できます。

ここで注意しなければならない点は、審査段階で早期審査を申請していたとしても、その早期審査が審判には引き継がれない、という点です。

つまり、審判段階でも早期に審理してほしい場合、改めて「早期審理」を申請する必要があります。

早期審理をしない場合、拒絶査定不服審判の審理期間は13か月ぐらいかかります(※1)。そうすると「早期審査」をしても「早期審理」をしなければ、早期に特許権を取得できるか否かが分からないことになります。

なお、「早期審理」をすれば、審理期間は4か月ぐらいです(※1)。

結局、早期審査した場合であっても、拒絶査定不服審判が自動的に早期審理対象になるわけではないので、拒絶査定不服審判においても結果を早く知りたい、という場合は、「早期審理」の申請をすることを忘れないようにする必要があります。

今知的財産事務所

※1 「特許行政年次報告書 2017年版 統計・資料編」による。
https://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/nenji/nenpou2017/toukei/all.pdf
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【弁理士】今 智司

Author:【弁理士】今 智司
今(こん)知的財産事務所の所長ブログです。2011年1月に独立開業しました。知財はビジネスに役立たせてこそだ!と考え、技術、デザイン、ブランドの知財複合戦略を考えています。

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