先行意匠


物品の外観デザインについて守りたい場合に利用できる法律の1つが意匠法です。

意匠についても特許と同様に、既に世の中にある意匠と同一・類似の意匠には意匠権は付与されません。

「既に世の中にある意匠」がどのようなところにあるかというと、まずは第三者の意匠公報です。その他にも各種雑誌や新聞記事等、様々な媒体があります。

そして、「先行意匠」は、特許公開公報や特許公報にも載っている場合があります。

つまり、特許公報等には図面が載っていることがありますが、その図面に意匠が表れている場合、その特許公報等が先行意匠が載っている媒体になり得ます。

意匠登録出願し、拒絶理由が通知された際に特許公開公報等が引用される場合がありますが、それは上記の通り特許公開公報等にも意匠が表されているからです。

「意匠」というとデザインなので、「なぜ特許公報が引かれるんだろう?」と思われる方もいるかもしれません。

しかし、外観だからこそ特許の図面にも表すことができ、その図面に自分が出願した意匠と同一・類似の意匠が既に載っていたとしたら、やはり新規性はないということになります。

もし拒絶理由通知の引用文献に特許公開公報があったとしても、それは審査官のミスではありませんので怒らないでくださいね。

今知的財産事務所

特許料等の軽減措置の期限に注意!

 
現在、中小企業やベンチャー企業等に対し特許の出願審査請求料や特許料、そして国際出願の調査手数料等が軽減される制度があるのですが、その制度は平成30年3月31日までに特許の審査請求をした場合、又は国際出願が受理された場合に限られます。

したがって、審査請求をする日や国際出願を平成30年4月1日以降にする場合、軽減措置の対象にはなりません(詳しくは特許庁ホームページ→こちら)。

これらから特許出願して審査請求する場合や国際特許出願をする予定がある場合であって、軽減措置を受けたい場合、審査請求や国際出願の期限に注意する必要があります。

但し、特許庁は、中小企業の審査請求料や特許料、そして国際出願手数料等を一律、軽減する法案を検討しているようです。

その法案が通れば、再び、審査請求料等の軽減を受けることができるようになると思います。

ただ、くだらないことで国会での審議時間が無くならないことを祈るばかりですね。

今知的財産事務所

審査状況伺書


特許庁で審査中の特許や商標について、なかなか特許庁から連絡(拒絶理由、若しくは特許査定)が来ない場合があります。

一体、審査はどうなっているの?早く知りたい!と思うと思います。

その場合、「審査状況伺書」という書面を特許庁に提出することで、審査の状況が現在、どのような状況であるかが分かります。

特許庁のホームページ(→コチラ。2018/1/29現在)にアクセスすると、提出方法が詳しく記載されています。

商標だけは電子メール(というか、ネット上の問い合わせフォーム)から審査状況を問い合わせることができるようになっています(特許も同様にしてほしいところですが…)。

とはいえ、「審査状況伺書」を提出しても、早期審査等を利用していない限り審査が早まるわけではありません。

しかし、審査官にも「審査状況伺書」が提出されたことについて連絡が行くようです。

以前、とある特許の案件で「審査状況伺書」を提出し、電話で審査官と話したことがあるのですが、その際、「伺書を提出されており、重要な案件なのですね。」というようなことを言われたことがあります。

審査が早まるわけではないですが、審査官の注意を向ける、という点では「審査状況伺書」はそれなりに有効かもしれません。

今知的財産事務所

特許は技術的アイデアを、著作権は具体的表現を守る

 
ときどき、「自分のアイデアについて書類にまとめているから、このアイデアは著作権で守られていますよね?」というようなことを尋ねてくる方がいます。

これは大きな誤解で、アイデア自体は著作権法で守られることはありません

著作権の保護対象は「著作物」ですが、「著作物」は、その人が自分の思想や感情をこめて具体的に「表現したもの」であり、思想や感情自体、つまりアイデア自体は著作物ではないからです。

上の例で言えば、アイデアについてまとめた「書類に表現されたもの」は著作物になり得るので、例えば、その書類に記載した文章を誰かがコピペ等してマネをしたら著作権侵害を問える場合がありますが、アイデア自体を誰かが使っても著作権侵害を問うことはできません。

例えば、京都地裁の裁判例に「アンコウ行灯事件」というものがあります(平成6(ワ)2364)。

以下、判決文の抜粋です。

 「(中略)「表現形式上の本質的特徴」は、それぞれの著作物の具体的な構成と結びついた表現形態から直接把握される部分に限られ、個々の構成・素材を取り上げたアイデアや構成・素材の単なる組み合わせから生ずるイメージ、著作者の一連の作品に共通する構成・素材・イメージ(いわゆる作風)などの抽象的な部分にまでは及ばないと解するべきである。
(中略)
・・・原告は、原告の著作物の表現形式上の本質的な特徴は、いわゆる従来の「火もらい」とは異なるデザイン重視の容器を製作し、さらにその容器内部に液体を満たして、その表面上に発光体を浮かべて、一体のものとして幽玄な空間を表現している点に存する旨主張するが、こうした点は個々の著作物を離れた抽象的なアイデアに属するものであり、右の点の類似のみを理由として著作権侵害の有無を論じることはできない。(以下略)」(下線は筆者が付与)

つまり、「容器を製作し、さらにその容器内部に液体を満たして、その表面上に発光体を浮かべて、一体のものとして幽玄な空間を表現」するという抽象的なアイデアに類似していたとしても著作権侵害ではないということです。

したがって、アイデアを保護したい場合、技術的なアイデアは特許、外観デザインに関するアイデアは意匠というように、著作権以外の知財で対応する必要があります。

ただし、技術的なアイデアでもなく、外観デザインにも関係しないアイデア等については、そのアイデアをそのまま保護することができない場合があります。

そのような場合、そのアイデアを何に使うのか、どう使うのかというそのアイデアを使う具体的シーン等を検討したうえで、間接的に特許法、意匠法、商標法、あるいは著作権法や不正競争防止法で対応できないかを考えることになります。

なお、上記の判決文の記載、特許請求の範囲っぽくなっているのが面白いですね。

今知的財産事務所

早い段階から足固め

 
スタートアップのみならず、新規事業検討時には「アイデア」があっても、まだ具体的なモノやサービスができていないことが多いと思います。

このような時点から「知財」の目を持っておくと、将来的に知的財産権を取得しないまでも事業にとって有益な武器が自社内に蓄積していきます。

それこそが「知財」なのですが、何を言っているかというと「知財」は目に見えるものではなく無体物です。無体物を第三者に説明する場合、どうしても「見える化」する必要があります。

その「見える化」、言葉で表したコンセプトであったり、アイデアスケッチであったり、事業計画書であったり様々ですが、言葉や文章、そして図等で表現するからこそ、第三者にも自分のアイデアがいかに良いかを説明できるようになります。

この「見える化」したアイデア、そのまま放置しておくとどうなるでしょう?

そのアイデアが良いものであればあるほど、マネしたくなる人が出てくるでしょう。

もちろん「どんどんマネして、世に広めてください」という考えもあります。

しかしこの考えには大前提があると思います。それは、「マネする人すべてが自分と同じ考えである」ということです。

マネする人の中に、そのアイデアを応用したモノやサービスについて特許権等の知的財産権を取得し、その人がその応用したモノやサービスについて独占し、第三者の実施を排除したとしたらどうでしょうか?しかも、そのような人が多く出てきたらどうでしょう。

特に先進的なアイデアであればあるほど、そのままでは市場に出せないことが多く、市場に出すために様々な工夫をする必要があります。その工夫をした内容について知的財産権が取得され、第三者の実施を排除する力が働いたとしたらどうでしょう。

そうなると、考え出したアイデアについて世に広めたいがために権利を取得しなかったのに、そのアイデアを応用したモノやサービスについてどんどん権利が取得され、応用したモノやサービスを更に応用することに対して障害が生じ、結果としてそれほど広まらない、ということも起こらないとは限りません。

ではどうするかというと、考え出したアイデアについて何らかの知的財産権を確保しておくことが必要です。

特許権等は「独占排他権」ですが、「独占排他権」というと他の人を排除するイメージが強いためか毛嫌いする人がいますが、「権利は使いよう」です。

権利を取得したうえで、その権利をリーズナブルな値段で利用してもらうか、ライセンス料をもらわないまでも権利の使い方をコントロールする(例えば、権利を自由に利用して応用したモノやサービスについて特許権等を取得してもよいが、第三者にリーズナブルな値段で利用させること、というような縛りを付ける等です。)ことで、自分のアイデアを世に広めることを制御することもできます。

もちろん、知的財産権を確保しておけば、自社のみがビジネスする際において強力なツールになります。

結局、「知的財産」は「財産」ですが、「財産」として価値が出るのは「使ってこそ」です。その「使い方」をどう制御するかが重要になってきます。

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【弁理士】今 智司

Author:【弁理士】今 智司
今(こん)知的財産事務所の所長ブログです。2011年1月に独立開業しました。知財はビジネスに役立たせてこそだ!と考え、技術、デザイン、ブランドの知財複合戦略を考えています。

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