公報の記載内容は疑ってかかれ!?

 
特許が出願公開されると様々な情報が公になります。その中の一つが昨日も指摘した発明者や出願人等の情報です。

しかし、その情報、そのまま鵜呑みにしてはいけない場合があります。

というのも、掲載された内容について公報発行後に変更が生じたとしても、その変更が公報に反映されることはなく、再発行もされません。

そのため、公報が発行された後に出願人の住所が変わったとか、出願人が他の会社等に変わったとしても、公報を見ただけでは分からないことがあります。

一方、J-PlatPatでは、出願された案件の経過情報を参照することができます(タイムラグはありますが)。こちらを見ると、住所変更や出願人の名義が変わったこと等、どのような経過をたどったのかを把握することができます。また、ファイル記録事項の閲覧請求をすることでも経過情報を把握できます。

この結果、公報に掲載された内容とJ-PlatPatに掲載された内容や閲覧請求して得られた情報とが異なることがあります。

このようなことは「特許公報」を参照する場合も注意が必要です。

例えば、特許公報に記載された権利者が、公報発行後に変わっている場合もありますし、以前のブログで書いたように、特許公報発行後に権利が消滅している場合もあるからです。

結局のところ、出願人や権利者等の書誌事項や権利の生死について正確な情報を得るためには、ファイル記録事項の閲覧請求等により、経過情報をすべてチェックする必要があります。

今知的財産事務所

氏名で検索

 
特許出願は、願書に、明細書、特許請求の範囲、要約書、そして必要な図面という書類を添付して手続する必要があります。

ここで願書(特許の場合、「特許願」と記載します)には、国際特許分類、発明者、出願人、代理人等の情報が記載されます。

公開公報や特許公報においては願書も公開されるので、発明者や出願人等の情報も公になります。そして、データベースがなくならない限り、これらの情報はネット上で誰もが自由に閲覧できます。

発明者にとっては、自分が何もしなくても自分がこれまで開発してきた技術内容がネット上にあることになり、いわば、自分の「技術開発の履歴書」がネット上にあると言えます(しかも、自分でデータベースをメンテする必要もありません。)。

例えば、J-PlatPatで「発明者」の欄に自分の名前を入力して検索すれば、自分がこれまで発明者としてかかわった特許が表示されます(ただし、同姓同名の人の特許が混じる場合はありますが)。

大学等の研究者にとって論文発表がとても重要ですが、技術開発に携わっているのであれば、論文だけでなく、特許も業績の一つになります。

また、気になる研究者の論文を図書館等で集めることは普通に行われていると思いますが、その研究者の名前で特許を検索しても面白いかもしれません。

特許出願の書類、特に明細書には、出願された発明がどのような課題を解決し、どのようなことに応用できるか等が記載されているので、もし論文の方で「この技術って、社会にどう役に立つんだろう?」と思った場合、公開公報等を参照すると技術のイメージを掴み易くなる場合があります。

大学の学部生であれば、論文とともに特許文献も参照することで、論文の理解が深まるかもしれません。

今知的財産事務所

まず始めはアイデアから

 
近年、これまで知財にタッチしていなかった企業さんからの問い合わせが増えています。

その中でよくある話が「アイデアはあるけど、まだモノが出来上がっていない。」というもの。

特許の対象は「発明」ですので、現実に目の前にその発明を実現したプロトタイプなりサンプルがないと特許出願できない、と考えている方が多くいます。

しかし、多くの場合、「現物を作ったことがなくても」特許出願することができます。

特許における発明がどのように完成するかというと、おおざっぱに言えば、「こういうことができたらいいな」とまず思い、「それは、こうしたら実現できるだろう」と考えることで、実は、完成します。

つまり、頭の中で考えただけで発明は完成することになります。

どのような発明をするにしろ、何をしたいのか?ということがまず存在すると思います。

そして、例えば、プログラムやシステムが絡む技術の場合、そのしたいことをどのようにすれば実現できるのかは、実際にプログラムを作成したり、システムを構築しなくても、必要とされる機能は特定できます。

ここで、特許の観点から言えば、どのような言語でどのようなコードを書けばよいかまでは求められません。必要とされる機能が特定されており、その機能を現在ある技術で実現できそうであれば、特許での発明は完成します。そして、その状態で特許出願はできます。

もちろん、構想したプログラムやシステムを本当に問題なく稼働できるようにする際には、実際にプログラムを作成したり、システムを構築し、適切な結果が得られるようにする地道な作業が必要になってきます。

また、機械系の技術の場合、現物を作らなくても「こういう機構にすれば、このような結果が得られるだろう」ということはその道の専門家であれば分かります。

このように、「現物」を作らなくても、いわば「構想段階」で特許における発明は完成し、特許出願することができます。

但し、化学系や医薬系のように、実際に作ってみなければ効果が分からないような技術分野の場合は、現物を作製する必要があります。

技術分野によって異なりはするものの、「現物」がなくても特許出願することができる場合があることを頭に入れておけば、他社に先んじて特許を取得することも夢ではありません。

今知的財産事務所

拒絶理由通知は「まだ駄目じゃない通知」

 
特許出願して出願審査請求すると、多くの場合、特許取得までに特許庁から拒絶理由(場合によっては複数回)が通知されます。

「拒絶」というとギョッとするかもしれません。

しかし、「拒絶理由通知」は言い換えると「まだ駄目じゃない通知」と言えます。

つまり、このままの請求項の内容では特許は取れませんよ、と言っているにすぎないからです。

ではどうするかというと、拒絶理由通知に対して特許請求の範囲や明細書等を補正する補正書の提出や、拒絶理由についての反論等を述べる意見書の提出で拒絶理由を解消していくことになります。

この「補正」について注意点があります。

特許明細書の補正は自由にできるのか?というとそうではなく、「出願時」の明細書に記載された範囲内で補正しなければいけません。

例えば、材料の発明で、出願時の特許明細書に「材料はAとBとから合成され、Aは1質量部以上10質量部以下」と記載されており、他には何も記載がない場合、この範囲外の数値に補正することはできませんし、明細書に「C成分」の記載がないのに「C成分」を追加するようなこともできません。

また、技術開発は日々なされているので、発明者からしたら過去の特許出願の内容より現在の開発内容の方が進んでいることが通常です。

そのため、拒絶理由に接した発明者(つまり、開発者)は、ついつい「いまの開発内容」をもとに「実はこうしたほうが良いんですよ。」という考えを述べることがあります。例えば、上記の例で言えば「いろいろ検討した結果、A成分とB成分だけでは良い効果は出ず、C成分が必要だった」というような場合です。

しかし、特許で補正できるのは、あくまでも「出願時」の明細書に記載された範囲内でしかできないので、出願後に新たに開発した内容を付け加えるような補正はできません(出願後に出てきた改良発明については、法的な時期が間に合えば「国内優先権主張出願」を利用することはできます。)。

補正する際はついつい現在の頭で考えて拒絶理由を見てしまいますが、あくまで出願時を基準にして考えること、及び補正は出願時の明細書の記載範囲内でしかできないことは念頭に置く必要があります。

ということで、拒絶理由通知は「まだ駄目じゃない通知」ではあるのですが、「まだ駄目じゃやない」といっても十分な反論や補正ができるか否かは、「出願時」の明細書がしっかりと作成されているか否かに大きな比重がかかっています。

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特許権取得後に権利が消えることも…

 
事業に役立つように頭をひねり、多大な労力と費用をかけてようやく特許権を取得できた時は、とてもホッとするものです。

しかし、特許が成立した後に、特許権が消えてしまう場合もあります。

昨日のブログでお話しした特許料の未納によっても消えますが、第三者からの「攻撃」により消える場合もあります。

それが、「特許異議申立」と「特許無効審判」です。

「特許異議申立」は特許掲載公報の発行日から6か月以内であれば、だれもが特許庁に申し立てることができ、申し立て後、「取消決定」がなされて当該決定が確定すると、特許権が初めから存在しなかったものとみなされてしまいます。

また「特許無効審判」は、利害関係人等のみが請求できる審判で、こちらも無効にすべき旨の審決が確定すると、原則として特許権は初めから存在しなかったものとみなされてしまいます。

したがって、権利を取得できたとしても、その後に、第三者からの攻撃により権利がなくなってしまう可能性がある点は、頭に入れておく必要があります。

もちろん、特許出願用の書類を作成する時点で、将来の異議申立や無効審判による攻撃に耐えうる内容にしておくことが最も重要です。

とはいえ、重要な特許であればあるほど(特に対象市場にとって重要であるほど)、第三者にとっては「邪魔者」です。第三者にとってはその特許権があると自分たちのビジネスにとって障害になると思うからこそ、ライセンスを検討したり、ライセンスがだめなら攻撃を仕掛けようと考えます。

特許を扱う場合、特許は事業上の一つのツールであると認識することが重要です。

結局、ツールは使いようということです。

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【弁理士】今 智司

Author:【弁理士】今 智司
今(こん)知的財産事務所の所長ブログです。2011年1月に独立開業しました。知財はビジネスに役立たせてこそだ!と考え、技術、デザイン、ブランドの知財複合戦略を考えています。

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