まず始めはアイデアから

 
近年、これまで知財にタッチしていなかった企業さんからの問い合わせが増えています。

その中でよくある話が「アイデアはあるけど、まだモノが出来上がっていない。」というもの。

特許の対象は「発明」ですので、現実に目の前にその発明を実現したプロトタイプなりサンプルがないと特許出願できない、と考えている方が多くいます。

しかし、多くの場合、「現物を作ったことがなくても」特許出願することができます。

特許における発明がどのように完成するかというと、おおざっぱに言えば、「こういうことができたらいいな」とまず思い、「それは、こうしたら実現できるだろう」と考えることで、実は、完成します。

つまり、頭の中で考えただけで発明は完成することになります。

どのような発明をするにしろ、何をしたいのか?ということがまず存在すると思います。

そして、例えば、プログラムやシステムが絡む技術の場合、そのしたいことをどのようにすれば実現できるのかは、実際にプログラムを作成したり、システムを構築しなくても、必要とされる機能は特定できます。

ここで、特許の観点から言えば、どのような言語でどのようなコードを書けばよいかまでは求められません。必要とされる機能が特定されており、その機能を現在ある技術で実現できそうであれば、特許での発明は完成します。そして、その状態で特許出願はできます。

もちろん、構想したプログラムやシステムを本当に問題なく稼働できるようにする際には、実際にプログラムを作成したり、システムを構築し、適切な結果が得られるようにする地道な作業が必要になってきます。

また、機械系の技術の場合、現物を作らなくても「こういう機構にすれば、このような結果が得られるだろう」ということはその道の専門家であれば分かります。

このように、「現物」を作らなくても、いわば「構想段階」で特許における発明は完成し、特許出願することができます。

但し、化学系や医薬系のように、実際に作ってみなければ効果が分からないような技術分野の場合は、現物を作製する必要があります。

技術分野によって異なりはするものの、「現物」がなくても特許出願することができる場合があることを頭に入れておけば、他社に先んじて特許を取得することも夢ではありません。

今知的財産事務所

拒絶理由通知は「まだ駄目じゃない通知」

 
特許出願して出願審査請求すると、多くの場合、特許取得までに特許庁から拒絶理由(場合によっては複数回)が通知されます。

「拒絶」というとギョッとするかもしれません。

しかし、「拒絶理由通知」は言い換えると「まだ駄目じゃない通知」と言えます。

つまり、このままの請求項の内容では特許は取れませんよ、と言っているにすぎないからです。

ではどうするかというと、拒絶理由通知に対して特許請求の範囲や明細書等を補正する補正書の提出や、拒絶理由についての反論等を述べる意見書の提出で拒絶理由を解消していくことになります。

この「補正」について注意点があります。

特許明細書の補正は自由にできるのか?というとそうではなく、「出願時」の明細書に記載された範囲内で補正しなければいけません。

例えば、材料の発明で、出願時の特許明細書に「材料はAとBとから合成され、Aは1質量部以上10質量部以下」と記載されており、他には何も記載がない場合、この範囲外の数値に補正することはできませんし、明細書に「C成分」の記載がないのに「C成分」を追加するようなこともできません。

また、技術開発は日々なされているので、発明者からしたら過去の特許出願の内容より現在の開発内容の方が進んでいることが通常です。

そのため、拒絶理由に接した発明者(つまり、開発者)は、ついつい「いまの開発内容」をもとに「実はこうしたほうが良いんですよ。」という考えを述べることがあります。例えば、上記の例で言えば「いろいろ検討した結果、A成分とB成分だけでは良い効果は出ず、C成分が必要だった」というような場合です。

しかし、特許で補正できるのは、あくまでも「出願時」の明細書に記載された範囲内でしかできないので、出願後に新たに開発した内容を付け加えるような補正はできません(出願後に出てきた改良発明については、法的な時期が間に合えば「国内優先権主張出願」を利用することはできます。)。

補正する際はついつい現在の頭で考えて拒絶理由を見てしまいますが、あくまで出願時を基準にして考えること、及び補正は出願時の明細書の記載範囲内でしかできないことは念頭に置く必要があります。

ということで、拒絶理由通知は「まだ駄目じゃない通知」ではあるのですが、「まだ駄目じゃやない」といっても十分な反論や補正ができるか否かは、「出願時」の明細書がしっかりと作成されているか否かに大きな比重がかかっています。

今知的財産事務所

特許権取得後に権利が消えることも…

 
事業に役立つように頭をひねり、多大な労力と費用をかけてようやく特許権を取得できた時は、とてもホッとするものです。

しかし、特許が成立した後に、特許権が消えてしまう場合もあります。

昨日のブログでお話しした特許料の未納によっても消えますが、第三者からの「攻撃」により消える場合もあります。

それが、「特許異議申立」と「特許無効審判」です。

「特許異議申立」は特許掲載公報の発行日から6か月以内であれば、だれもが特許庁に申し立てることができ、申し立て後、「取消決定」がなされて当該決定が確定すると、特許権が初めから存在しなかったものとみなされてしまいます。

また「特許無効審判」は、利害関係人等のみが請求できる審判で、こちらも無効にすべき旨の審決が確定すると、原則として特許権は初めから存在しなかったものとみなされてしまいます。

したがって、権利を取得できたとしても、その後に、第三者からの攻撃により権利がなくなってしまう可能性がある点は、頭に入れておく必要があります。

もちろん、特許出願用の書類を作成する時点で、将来の異議申立や無効審判による攻撃に耐えうる内容にしておくことが最も重要です。

とはいえ、重要な特許であればあるほど(特に対象市場にとって重要であるほど)、第三者にとっては「邪魔者」です。第三者にとってはその特許権があると自分たちのビジネスにとって障害になると思うからこそ、ライセンスを検討したり、ライセンスがだめなら攻撃を仕掛けようと考えます。

特許を扱う場合、特許は事業上の一つのツールであると認識することが重要です。

結局、ツールは使いようということです。

今知的財産事務所

特許査定→特許料を払わないと権利は発生しません

 
特許には様々な費用がかかります。出願や拒絶理由に対応する費用だけでなく、権利が発生する際や、権利化後にも費用がかかります。

まず、特許出願し、「特許査定」が出ただけでは権利は発生しません。

「特許査定」が出た後、所定期間内に「特許料」を特許庁に納めることでようやく権利が発生します。「特許査定」後に納める特許料は、通常は1~3年分です。

したがって、3年間は特許権は存続します(異議申立で取り消されたり、無効審判で無効にならない限りは。)。

問題はその後です。

4年目以降は、原則として毎年、特許庁に特許料を支払わなければ、権利が消えてしまいます(複数年分をまとめて支払うことも可能です)。

この特許料、条文上は「特許料」といいますが、よく「年金」とか「特許維持年金」と呼ばれています。

「年金」ですが、自分がもらえるのではなく、特許庁に納めなければならない費用ですが。。。

このいわゆる「年金」ですが、通常の特許事務所で特許権を取得した場合、大抵、年金納付期限前にリマインドがなされることが多いので、年金の納め忘れは少ないことが一般的です(特許料の自動納付制度もあり、自動納付制度を利用すれば納め忘れはないでしょう。)。

しかし、事務所によってはリマインドしないところもありますし、自身で特許権を取得し、自動納付制度を利用していない中小企業やベンチャー企業の中には、年金の「納め忘れ」をするところもあるようです。

但し、期限までに特許料を納付できなくても、期限経過後6か月以内であれば、本来の特許料の倍額を納付すれば権利を維持することはできます。

そして、この特許料は、維持期間が長くなると段階的に増額されていきます。

具体的には、平成16年4月1日以降に審査請求をした出願であれば、
 第1年~第3年まで→「毎年2,100円に1請求項につき200円を加えた額」
 第4年~第6年まで→「毎年6,400円に1請求項につき500円を加えた額」
 第7年~第9年まで→「毎年19,300円に1請求項につき1,500円を加えた額」
 第10年~第25年まで→「毎年55,400円に1請求項につき4,300円を加えた額」
とどんどん増額していきます(2016年4月1日時点)。
(※第21年~第25年については、延長登録出願があった場合のみ)

権利を使っている間は、きちんと年金を納めているのか、気を付けなければいけません。

その一方で使わなくなった特許権や事業にとって価値が薄れてきた特許権については、どう取り扱えばいいのかを検討しないと、年金費用だけがどんどんかかっていきます。

自分が所有している権利と事業との関係に継続的に目配りする必要があります。

今知的財産事務所

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出願審査請求のタイミング

 
何度もこのブログでも書いていますが、特許権は特許出願しただけでは取得できず、「出願審査請求」をする必要があります。

この「出願審査請求」は、原則として特許出願から3年以内にする必要があります。

この期間を逃してしまうと特許権を取得することができなくなります。

ところで、特許出願した内容は出願から1年6か月経過後に「出願公開」されます。出願した内容がすべて世の中に公開されるので、だれがどのような発明を出願したのかが第三者にも分かるようになります。

この「出願公開」により、「うちと同じ技術が既に出願されている」とか「似たような技術が出願された」というように考える第三者がいるでしょうし、その一方で「うちとは違う技術だ」、「違う技術だけど面白そうな技術だ」とか「参考になる内容だ」と考える第三者もいます。

この中で「同じような(似たような)技術が出願されている」と考えている第三者は、特許出願をした企業にとっては競合になり得る企業です。

そして、「出願審査請求」をしていない特許出願であって出願から3年経っていない出願や、出願から3年経っているけれども「出願審査請求」されて現在、特許庁で審査中、というような出願(いわゆる、特許出願中の出願)は、この競合になり得る企業にとって「牽制効果」を発揮します。

というのは、特許出願中ということは、まだ権利になるか否か、また、権利になる場合はどのような権利になるかが不確定な状況であり、第三者にとっては、現在自分たちが行っている(あるいは行おうとしている)ものが将来発生するかもしれない特許権を踏んでしまうかもしれないからです。

第三者が特許権を踏んでしまうかもしれないというリスク回避するためには、特許出願中のものが拒絶されるように特許庁に情報提供したり、このままでは権利になりそうだというのであれば、回避技術を検討したり、そもそもの事業方針を変えざるを得なくなります(それでも回避するつもりがない、というのであれば、権利化された場合に備え、特許権を取り消したり無効にしたりできるような準備をする必要があります。)。

このような「牽制効果」を最大限利用したい場合は、特許出願から3年間「泳がせ」、審査請求期限が切れるぎりぎりで審査請求するということが考えられます。しかも、早期審査を利用しなければ「特許出願中」の期間をより延ばすことができますし、分割出願を利用すれば、更に延ばすこともできます。

もちろん、早期に権利化したい場合は「出願審査請求」を早めにし、早期審査を利用するというような方法をとらざるを得ませんが、市場と出願した発明との関係を考えた場合、「特許出願中」の期間をなるべく長くして牽制効果を利用するという場合もあります。

出願審査請求のタイミングは様々な理由により決めることができますが、上記のように出願内容と市場との関係(あるいは競合との関係)によっても決定することがあります。

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【弁理士】今 智司

Author:【弁理士】今 智司
今(こん)知的財産事務所の所長ブログです。2011年1月に独立開業しました。知財はビジネスに役立たせてこそだ!と考え、技術、デザイン、ブランドの知財複合戦略を考えています。

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