最近は特許庁もスタートアップに対する支援に力を入れています。私もスタートアップ企業のお客様について知財面からサポートしたことがあります。
その経験から、スタートアップが(というか、サポートする側が)知財について注意しなければならない点があるな、と思うことがあります。
スタートアップに限りませんが、新規ビジネス・新規事業をやろうとする場合、大まかに言って、創業者や立案者が、どのような価値を社会に実装したいのかを構想し(どのような未来を実現したいのかを構想する、とも言えます)、その価値を実現するプロダクトやサービスを設計して実際に創っていく、というプロセスがあります。
その「価値」ですが、買ってくれる人(つまり顧客です)をきちんと意識しているかどうかによって、「価値」が有用なのか否か、有用性の高低が変わってきます。
つまり、ターゲットは誰であるのかを考え、ターゲットの視点・価値観からターゲットのインサイトを考える、というプロセスが重要です。
「いい技術がある」といったとしても、その「いい」とは誰にとって良いのでしょうか?あくまで顧客にとって「いい」ものでなければならず、顧客に好きになってもらえるプロダクト・サービスでなければ意味がありません。
それを顧客が手に入れたらどんなハッピーなこと(BtoCだったら、どんなにハッピーな暮らしになるのか、BtoBだったらどんなにハッピーな効果が得られるのか等々)が得られるのか、顧客の暮らしがどう変わるのか、を考えるということです。
このプロセスを抜きにして、この技術について特許を取ろうとか、このデザインについて意匠を取ろうとか、とりあえずネーミングについて商標を、というようなことにならないように気を付ける必要があります。どんなハッピーなことがあるのかを考えなければ、適切な知財の設計や権利取得はできません。
ただ、これを特に気を付けなければならないのは支援する側です。つまり、知財面をサポートする弁理士等の外部専門家が、上記プロセスをしっかりと把握した上で支援しなければなりません。
知財はあくまでも事業を支える土台の一部です。事業に使える知財でなければなりませんが、「権利を取ろう」という意識が強すぎると使えない知財になってしまいかねません。
そうならないように、うまくいっているスタートアップは(スタートアップに限らず、うまくいっているベンチャー・中小企業もそうです)、知財を担当する者だけでなく、エンジニア、デザイナー、時にはマーケターやクリエイターを交えて協働しており、結果としてビジネスが明後日の方向にいかないようにしています。
事業開始初期段階でブランド力もない中、知財はもちろん重要ですが、重要だからこそ上記の点をしっかり認識してスタートアップ企業を支援していく必要があります。
そのような事務所でありたいと思います。
今知的財産事務所
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