バルミューダの扇風機
先日、バルミューダという企業の扇風機「グリーンファン」を購入しました。
購入はしましたが、人気商品ということで入荷まで1カ月程度かかるとのことでしたが。。。
それはともかく、この扇風機はもしかしたらユーザーの行動観察を実行して(あるいはユーザー「思考」を持って考えて)生まれた製品かもしれないと想像しています。
まず、この扇風機から送りだされる風は他社の扇風機の風に比べてまったく違いました。
何が違うかというと、風の『柔らかさ』です。
他社の扇風機は空気がいわば塊となって送りだされているためか、肌に当たると「硬い」感じがします。しかし、バルミューダの扇風機はそのようなことがなく『柔らかい』感じがしました。実際に試す前は半信半疑だったのですが、試してみると『柔らかさ』を実感できます。
この『柔らかさ』はもちろん扇風機のファンに秘密があるのですが、それはバルミューダのホームページに譲ります。ただ1つだけ言えるのは、成熟製品であっても新たな価値を生むことができる、ということです。それも、もしかしたらユーザーが扇風機の風についてどう思っているのかを検討した結果かもしれません。
例えば、自然の風なら長時間当たっていても気持ちのいいものですが、昔の扇風機の風は、長時間当たっていると必ずしも気持ちのよさは持続しなかった気がします。暑い時に急速に体を冷やすという点では昔の扇風機の風は役に立つと思いますが、心地よさを長時間感じていたいときには不向きかもしれません。その様なユーザーの暗黙的なニーズをバルミューダは把握したのではないかという気がします(それも、もしかしたらユーザーの立場に立ったか、若しくはユーザーを観察して。)。把握した内容はバルミューダにとって大切な見えざる資産になりますね。
また、バルミューダのホームページには、「デザインが違う」と銘打って、リモコンやボタンの位置について説明されています。しかし、電気店で実際に手にした時にそれらよりも感心した点が1つあります。
それは、フロントパネルです。
私の実家にあった扇風機や展示されていた他社の扇風機のフロントパネルは、その取り外しはフック等の留め具を一つ一つ解除するものです。一方のバルミューダは、フロントパネルの複数個所に磁石が設けられており、磁石で本体に固定しています。それも、幼児等は簡単には外せず、大人なら簡単に外せる程度の強度で固定されていました。立派な技術的なアイデアです。
これまで特に扇風機の歴史を調べたわけでも家電量販店に行って毎年チェックしてきたわけでもバルミューダにインタビューしたわけでもないのですが、磁石でとめるという発想はけっこう新鮮に感じました。これも、ユーザーが扇風機を買う時に考えるのが、シーズンオフ時における扇風機をしまう場所と「掃除」であることを考えると、なるほど、と思うのです。
すなわち、シーズンオフ時には扇風機の羽を掃除して扇風機をしまう訳ですが、なるべく楽に掃除をしたいのがユーザーの心情です(できれば掃除はしたくない)。そうすると、羽根を取り外すまでに手間がかかると掃除をするのが億劫になるので、なるべく簡単に羽根を取り外す構造を考える必要があります。それをバルミューダは磁石で実現したわけです。磁石なら扇風機をしまう時以外でも手軽に掃除ができるかもしれません。
バルミューダの扇風機の例のように、成熟製品であっても実際のユーザーの立場に立てばまだまだ「変革」の余地がある場合があるのですね。そしてその「変革」を裏で支えるのが開発者の「知」であり、更にその「知」を裏の裏で支えるのが「知財」であったりします。見えないところでいろいろな「知」や「知財」が活躍しているのですね。
今知的財産事務所
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