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足元にある知財

よく『コア技術』や『核となる技術』を持って打って出ていきましょう、と言われることがあります。ただ、そうはいっても「うちにはそのような武器なんてない」と考えている中小企業さんも存在しています。

しかし、足元を見渡せば『武器』を構築することができる場合があります。その場合の真の『武器』はアイデアだったりします。

例えば、私が現在、理科大のMOTペーパー(修士論文のようなものです)で事例対象企業として取り上げさせてもらっている(有)清田製作所の社長の清田さんは、かつて、カメラの露出計の針の製造の仕事をされていました。昭和30年代の話です。

当時、露出計の針を作るための金型の製造には真空炉が必要とされていました。しかし、一介の町工場にそのような高価な設備はなく、清田さんはアイデアを振り絞ります。

そして思いついたのが、空き缶でした。空き缶に金型を入れ、隙間を炭で充填し、焼き入れを行ったのです。これにより、真空炉を用いた場合と同等以上の高精度、そして、真空炉を用いた場合よりもはるかに低いコストで露出計の針の金型を製造することに成功しました。実際、真空炉を使った場合に比べて露出計の針のコストを1/10にできたのです。

また、北海道旭川市神居町に斉藤牧場という牧場があります。この牧場は、「蹄耕法(ていこうほう)」(牛を使った牧草地の造成法)で有名な牧場です。

斉藤牧場の斉藤さんは、もともとは近代的、効率的な酪農を目指していたのですが、割り当てられた土地が石だらけの山で、何度トライしても近代的な酪農に失敗します。

斉藤さんは途方に暮れていました。しかし、ハタと気づきます。『自然に立ち向かう』のではなく『自然に溶け込めばよい』と。

そこで、岩だらけの山にもともと存在していた石山、雑草、土壌、そして牛をうまく組み合わせることにより独自に「蹄耕法」を開発したのです(詳しくは斉藤牧場のホームページをご参照ください。)。

このように最新技術や最新設備がなくても足元に存在しているモノ、身の回りに存在しているモノを先入観を外して知覚し、目的に向かってそれらのものをうまく利用する「アイデア」を出すことも、立派な『武器』になるのではないかと思います。

ちなみにTRIZでは、問題を解決するために、対象としているシステムやそのシステムの周りに存在している『資源』を上手く使うことを考えるように促します。身の回りにあるモノを利用するという考えは、当たり前のようでいて意識しないと見落としがちなのかもしれませんね。

アイデア創出支援に尽力します。
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【弁理士】今 智司

Author:【弁理士】今 智司
今(こん)知的財産事務所の所長ブログです。2011年1月に独立開業しました。知財はビジネスに役立たせてこそだ!と考え、技術、デザイン、ブランドの知財複合戦略を考えています。

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