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きっちり耕し、維持しておく

 
様々な企業を見ていると、特許出願をそれほどしていなくても、「知的財産の蓄積」がある企業はいまあるビジネスだけでなく、変化しつつあるビジネス環境においても強い、という傾向があるように思えます。

「知的財産の蓄積」とは、技術アイデアについて特許権を取得したり、ネーミングについて商標権を取得するだけではなく、特許出願等により知的財産権を取得していなくても、ノウハウであったり、出願はしないまでも自社の人間が使えるようにするためにアイデアを文章化・図式化したものを社内に蓄えていく、ということです。

この様に蓄積しておくことで、いざ必要になったときにすぐに使えるツールとして知的財産を用いることができます。

ツール化しておけば、例えば、ある事業において何らかの課題が生じたときに、そのツールをすぐに使えるかもしれません(少なくとも、使えるかどうかすぐに検証できるでしょう。)。

また、例えば、SDGsにおいては、バリューチェーンの各段階においてSDGsのマッピングをすることが提案されています(例えば、グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンの「SDG Compass 日本語版」参照。2018年6月24日検索。)

「バリューチェーンで様々な課題の抽出&SDGsの目標との合致」というところを見つければ、将来的に大きくなり得る市場で自社のプレゼンスを確保できるチャンスがあります。

ここで、知的財産権や知的財産を蓄積するにはそれなりのコストがかかり、また、かけたコストから得られるリターンはかなり先の話になります。そのため、目先のコストがどうしても気になって、知的財産を蓄積することをおろそかにしてしまうかもしれません。

しかし、目先のコストを気にして知的財産を蓄積しておかないと、同業他社に先を越される場合があったり、事業上のチャンスを見つけたとしても、そのチャンスを活かすためのツール(知財)がないとチャンスを最大限、活用できないことになります。

単に知財費用を抑えることを優先し、知財の蓄積を怠ったり、アイデアの見える化をせずにアイデアを放置したりすれば、時間の経過によってリスクが一気に押し寄せる可能性が高まってしまう、ということに気を付けなければなりません。

言ってみれば、おいしい作物を実らせるには、しっかりと土を耕すのと同様、知財もしっかりとその土台に投資をし、維持しておく必要がある、ということです。

やせた土地からおいしい作物は実らないので、その「土地を耕す」際には、知財の知識、知財と経営との関係性等を理解したうえで耕し、耕した状態を維持する必要があります。

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知的財産の効果

 
知的財産って、どう役に立つのか?
知的財産が重要といっても、やはりこの点に納得のいくことがなければ足を踏み出すことはなかなかできません。

例えば、特許権を取得した場合の効果には様々なものがあります。
ただし、特許権を取得しただけでは権利がある状態というだけで、実際は、ビジネスにどう活用するのかを考えて使うことで初めて「効果」が出てきます。

特許権に限らず、知的財産の一般的な使い方としては私の以下のコラムをご参照ください。
日経喝力コラム:「第3回 社外に対する知的財産の様々な効能~「権利」の効果的な使い方~
日経喝力コラム:「第4回 社内に対する知的財産の様々な効能~「権利行使」だけではない!知的財産の得する効果~

上記コラムに記載したこと以外に何か効果はないか?というと、特にベンチャー企業や中小企業にとって重要な効果があります。

それは、株価に影響する(良くも悪くも)、ということです。

例えば、「ベンチャー 株価 特許」というキーワードでニュース検索すると、特許権を取得したことで株価に大きな影響を与えるニュースがいろいろと出てきます。

「世の中に今までなかった技術を特許権に仕立て上げ、ある企業が持ちました。そして、これからその技術を活用していきます」ということなので、経営資源に限りあるベンチャーや中小企業にとっては株価を押し上げる1つの要素になり得ます。

ただ、特許を1件取得しました、として一時的に株価が上がったとしても、応用技術について継続的に特許を出していかなければ、徐々に株価に与える特許の影響は薄れてしまう場合がある点には注意が必要だと思います(医薬品など、1件の特許で市場を実質的に独占できるような場合は、1件の特許だけでも株価に良い影響を与え続ける場合もあります。)。

例えば、ある1つの発明についてPCT出願後に日本や米国に移行してそこで特許権を取得し、その後に同一発明について欧州等の他国に移行して特許を取得したとしても、基本的には同一発明についての特許なので、株価は必ずしも上がらない場合があります。

技術は継続的に進歩していくものなので、開発した技術をコツコツと見える化し、事業戦略上、権利化が必要なものについては権利化して蓄積していく、ということが特に規模の小さい企業にとっては大切なことではと思います。

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SDGsと知財


SDGsをご存知でしょうか?

SDGsは「持続可能な開発目標」のことで、2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)で残された貧困等の課題や、国際的に問題となっている気候変動、格差是正等を含んだ17の目標と169項目のターゲットが盛り込まれた国際目標のことです。

とあるところから「SDGs×知財×α」というような感じで検討してみない?とのお話をいただいたので、色々と検討しているところです。

それはそれとして、SDGsの目標やターゲットは、普通の企業、もちろん、中小企業やベンチャー企業にとってもとても有用です。

何が有用かというと、例えば、何らかの技術を持っている(or開発した)けど、その適用先がなかなか思いつかない、といったような場合に、SDGsの目標やターゲットを眺めてみると、意外にも多くの適用先が見つかる場合があると思います。

17の目標と169項目のターゲットはネット検索すれば様々なところで紹介されていますが、例えば、ユニセフのHPにも紹介されています(2018/5/22検索)。

例えば、「目標6.すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する」の中に、「6.3 2030年までに、汚染の減少、投棄の廃絶と有害な化学物・物質の放出の最小化、未処理の排水の割合半減及び再生利用と安全な再利用の世界的規模で大幅に増加させることにより、水質を改善する。」という項目があります。

東京都は世界でも類を見ない水処理技術を有しているのでその技術を活かして上記目標に貢献できると思いますし、水回りの技術に携わっている企業も、自分たちの技術を使って上記目標に貢献するにはどうしたらよいか?と視点を世界に移せば、飲料水に困っている人々の助けになると共に、自社技術のプレゼンスも世界的に向上する可能性があります。

MDGsはトップダウン的な目標決定だったのですが、SDGsは『3年の年月をかけて途上国、先進国を含むあらゆるステークホルダーの議論を踏まえて策定されたもの』であり、民間の意見を取り入れて作られたものなので、『企業を意識した内容が色濃く反映されてい』ます※1。

つまり、民間のことを念頭においてSDGsは策定されており、民間企業との親和性も高いのではないかと思います。

そのため、企業にとってSDGsは、ビジネスにおける機会としてどのようなものがあり、新規市場を切り拓く可能性を示唆してくれるものとも言えますし、目標やターゲットを眺めて検討するだけでも、「このような課題があるのか。自社技術をこうして使えば解決できるかもしれない。」というようなアイデアが浮かぶかもしれません。

そして、「ビジネス」や「新規市場の開拓」、「ビジネスにおける機会」とくれば、当然、知財も関わってきますので、弁理士も力を発揮できるかもしれません。

文科省等からSDGsのアクションプログラムが発表されていますので、日本でもこれから議論がどんどん活発になるのではないでしょうか。

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※1 以下の文献から引用させていただきました。
足達英一郎、村上芽、橋爪麻紀子著、「ビジネスパーソンのためのSDGsの教科書」、日経BP社(2018年)、12-15頁

体験の蓄積

 
主に中小企業、ベンチャー企業や中堅企業の現場担当者向けになると思いますが、弊所でのサービスは特許や商標に関わらず、初めから終わりまでの間に複数回のディスカッションを挟んで提供しています。

知的財産についてこれまで触れてこなかった場合や、少しは触れたことがあるものの、知的財産についてはよく分からない、という状況はベンチャーや中小企業(更にはスタートアップ企業)の人にとっては普通のことです。

そこで、例えば、そもそもこれからやろうとする事業においてどのようなところが課題なのかを含めていろいろな「話」をします。この段階では特許や商標が出るかは分からず、企業の現場担当者(場合によっては経営層の方)としてどのようなことが課題なのかを洗い出すにすぎません。

その上で、事業をこれから進めていく上で必要になる様々なことのうち、知財で対応可能なところを明らかにします。

そして、必要に応じて権利化に向けて動き出します。

権利化の道程では、まずは権利対象を浮き彫りにし、その後に実際に特許等を出願し、拒絶理由が来た場合はそれに対応し、権利化された後は具体的にどう使っていくのか等々、様々なフェーズが存在します。

その各フェーズにおいてディスカッション(要するに打合せ)をするのですが、この打合せは、実際に自社が出願した内容を元に行います。そうすると、具体的に知的財産について実感を持って体験ができるだけでなく、その場で弁理士にいろいろ疑問等を投げかけて解決することで知的財産についての体験が蓄積されていきます。

とはいえ、初めのうちは知財についてやはりまだよく分からない状況が続きますが、企業の現場担当者が弁理士とディスカッションすることで(言ってみれば、知財のグーグル君として使うことで)、徐々に知財の体験が蓄積され、知財について「何が分からず何が分かるのか」が分かるようになります。

そうすると、これまでと比べて知財について自分で考える余裕が出て来るだけでなく、自分でも対処できる内容も増えるので、事業に現場担当者としてより主体的に貢献できるようになります。

このように、出願前から出願時、出願中、出願後等々の様々なフェーズでの体験が弁理士とのディスカッションで蓄積していき、蓄積した体験を実際の業務に活かすことで、企業の現場担当者が当該企業において活躍する場が増えることにもつながります。

これが、弊所がお客様との打ち合わせを重視している1つの理由でもあります。

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早い段階から知財を見える化しておく

 
最近、ようやく知財の「見える化」について人口に膾炙してきました。

ただ、「見える化」といっても、そもそものどの段階で検討したらよいのかとか、どうやって「見える化」すればよいのか、どう役に立つのか等、これまで知財にあまり馴染みがないと難しいかもしれません。

知財の見える化や、見える化した技術の活かし方については私の昔のブログ(→ 知財の見える化(2014/6/26)、技術の見える化と見える化した技術の活かし方(2015/5/29)等)を参照していただくとして、「知財の見える化」って、やはり大切だな、と思った出来事がありました。

とある会社のプロダクトデザイナーさんから、あるカテゴリーの商品について、これまでになかった形態の商品を考えたので特許等の可能性があるかどうかのご相談を受けました。

いくつかのデザインスケッチがあり、それを参照すると確かにパッと見たところでは、これまでにはなかったようなものであり、想定している機能も画期的なものでした。

それらのスケッチを皆で参照しながら、「あれもいいよね」とか「こういうのもどうでしょう?」とか(半ば雑談に近かったかもしれませんが)いろいろなアイデアが出てきました。

一方、そのスケッチに表されたものを実現するためにはどうしたらよいか?つまり、どういった構造で作り上げれば実現できるのか?についてはまだ検討されておらず、特許出願するにはちょっと時期尚早という状況でしたので、その辺りを詰めた上で再度検討するということになりました。

この出来事ではデザイナーさんがパパっと描いた「デザインスケッチ」が知財を「見える化」したものになります。

このスケッチがあれば、「こういう形態にしたらもっと面白いよね」とか「ここらあたりの形状をこうしたらもっとみんなが快適になるのでは?」とか、「この形態を実現するには、こういった構造をとればいいのでは?」とか、様々な人とディスカッションすることが容易になります。

そうすると、このスケッチから新たなアイデアが作り出され、それが新たな「知財」として生まれてくることにもなりますし、参加メンバーの頭を刺激しやすくなります。。

このように「見える化」をしておくことは何も特別難しいことではありません。「特許」と聞くと「あの小難しい文章でしょ?めんどくさいよね。」と思うかもしれませんが、知財というのは特許だけではなく、その前提として様々なアイデア自体をちょっとキーワードで表しておくとか、上記のようにラフスケッチにしておくこと、そしてそれをきちんと管理・保管しておくことが「見える化」の第一歩です。

もちろん「見える化」したアイデア等がどのような知的財産権になり、事業にどう役立つのかは別途、きちんと検討する必要がありますが、まずはいろいろアイデアを出して書き留めたり、ちょっとしたスケッチを描いて、周囲の人や可能であれば弁理士を交えてディスカッションすることが、「見える化」した知財を「使える知財」に仕立て上げることにつながります。


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プロフィール

【弁理士】今 智司

Author:【弁理士】今 智司
今(こん)知的財産事務所の所長ブログです。2011年1月に独立開業しました。知財はビジネスに役立たせてこそだ!と考え、技術、デザイン、ブランドの知財複合戦略を考えています。

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