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ブログを移転しました


この度、BLMの弁理士と共にブログを書くことになり、ブログを下記に移転しました。

BLM&KOIP 日々是淡々練

よろしければ新しいブログもよろしくお願いいたします。



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課題って、本当に重要


発明を解決する課題の設定を適切にできるか否か(見つけることができるか否か)は本当に重要です。課題次第でクレームも必要な実施例も変わってくるので。。。

そういった課題に関する事件として、知財高裁で平成29年(行ケ)第10129号 特許取消決定取消請求事件という事件がありました。

この事件の特許は、「コク、甘味、美味しさ等を有する米糖化物含有食品を提供することができる」という特許(特許第5813262号)で、請求項1は「 米糖化物、及びγ-オリザノールを1~40質量%含有する米油を含有するライスミルクであって、当該米油を0.1~10質量%含有するライスミルク。」というものです。

この事件の概要は、原告が有する上記特許に対して特許異議申立されたところ、結局、特許庁において異議決定されたので、原告(特許権者)が異議決定の取り消しを求めて提起した訴えです。結果としては異議決定が取り消されました。

裁判所は特許庁での課題の把握について「発明が解決しようとする課題は,一般的には,出願時の技術水準に照らして未解決であった課題であるから,発明の詳細な説明に,課題に関する記載が全くないといった例外的な事情がある場合においては,技術水準から課題を認定するなどしてこれを補うことも全く許されないではないと考えられる。しかしながら,記載要件の適否は,特許請求の範囲と発明の詳細な説明の記載に関する問題であるから,その判断は,第一次的にはこれらの記載に基づいてなされるべきであり,課題の認定,抽出に関しても,上記のような例外的な事情がある場合でない限りは同様であるといえる。したがって,出願時の技術水準等は,飽くまでその記載内容を理解するために補助的に参酌されるべき事項にすぎず,本来的には,課題を抽出するための事項として扱われるべきものではない」とし、「これを本件発明に関していえば,異議決定も一旦は発明の詳細な説明の記載から,その課題を「コク,甘味,美味しさ等を有する米糖化物含有食品を提供すること」と認定したように,発明の詳細な説明から課題が明確に把握できるのであるから,あえて,「出願時の技術水準」に基づいて,課題を認定し直す(更に限定する)必要性は全くない・・・異議決定が課題を「実施例1-1のライスミルクに比べてコク(ミルク感),甘味及び美味しさについて有意な差を有するものを提供すること」と認定し直したことは,発明の詳細な説明から発明の課題が明確に読み取れるにもかかわらず,その記載を離れて(解決すべき水準を上げて)課題を再設定するものであり,相当でない。」と判断しました。

通常、明細書に課題を全く記載しないということはないので、発明の詳細な説明から課題が明確に読み取れるのであれば、そこから離れて課題を再設定するようなことはダメですよ、ということです。記載要件における課題の考え方の参考になりますね。

しかし、一番重要なのは、出願明細書を作成する際に、適切な課題を発明者から聞き出すということです。このプロセスがないと始まりませんね。

今知的財産事務所

ロウソクの特許


自然災害が頻発しています。「想定外」のことが普通に起きるようになってしまい、やはり、日ごろから備えておく必要があるな、と改めて思います。

我が家の非常用持ち出し袋には、LEDランタンだけでなくロウソクも入っています。いざというときには複数の手段があると安心ですね。

知財高裁で平成27年(行ケ)第10184号 審決取消請求事件という事件がありました。

この事件は、発明の名称が「ローソク」という特許(特許第4968605号)に対し、原告が特許庁に無効審判を請求したことに端を発します。

この事件はちょっと長いのですが、おおよそ以下のような流れです。

上記無効審判請求→特許権者が訂正請求→特許庁が審判請求が成り立たないと審決→原告がこれを不服として審決取消訴訟提起→審決取消判決→被告(特許権者)が特許庁に訂正請求→特許庁が訂正を認めた上、審判請求は成り立たないと審決→原告が本件審決取消訴訟提起、という流れになります。

結果、この裁判においては原告の請求は棄却されました(特許権が存続)。

この特許の訂正後の請求項1は、「ローソク本体から突出した燃焼芯を有するローソクであって,該燃焼芯にワックスが被覆され,かつ該燃焼芯の先端から少なくとも3mmの先端部に被覆されたワックスを,該燃焼芯の先端部以外の部分に被覆されたワックスの被覆量に対し,ワックスの残存率が19%~33%となるようこそぎ落とし又は溶融除去することにより前記燃焼芯を露出させるとともに,該燃焼芯の先端部に3秒以内で点火されるよう構成したことを特徴とするローソク。」というものです。

この特許では非常用というよりは、点火時間を短縮して人手を減らすといったような効果に焦点を当てたローソクが対象になっています(上記特許の特許公報の段落【0006】等参照)。

「ローソク」?とも思ったのですが、自然災害が立て続けに起こる昨今、こういった技術も大事にしていかなければなりません。

ところで、この裁判では、原告がPBPクレームだから明確性要件を満たさないと主張したのですが、「本件の特許無効審判において無効理由として主張されたものではなく,当該審判の審理判断の対象とはされていないものと認められるから,もとより本件訴訟の審理判断の対象となるものではなく・・・失当というほかない」とされていますが、裁判所は以下のように付言しています。

すなわち、裁判所は「本件発明の「該燃焼芯にワックスが被覆され,かつ該燃焼芯の・・・先端部に被覆されたワックスを,該燃焼芯の先端部以外の部分に被覆されたワックスの被覆量に対し,ワックスの残存率が19%~33%となるようこそぎ落とし又は溶融除去することにより前記燃焼芯を露出させる・・・ことを特徴とするローソク」という記載は,その物の製造に関し,経時的要素の記載があるとはいえるものの,ローソクの燃焼芯の先端部の構造につき,ワックスがこそぎ落とされて又は溶融除去されてワックスの残存率が19%ないし33%となった状態であることを示すものにすぎず,仮に上記記載が物の製造方法の記載であると解したとしても,本件発明のローソクの構造又は特性を明確に表しているといえるから,このような特段の事情がある場合には,PBP最高裁判決にいう不可能・非実際的事情の主張立証を要しないというべき」と判断しました。

記載上、経時的要素があったとしても、単に何らかの状態を示すに過ぎない場合はPBPクレームにはならない、と言えそうです。PBPクレームを書かざるを得ないときには、これも参考になりそうですね。

今知的財産事務所

技術を活かす一つの道筋


あるビジネスを進めるとか、ビジネスを構築するというような場合には、長短はあるもののそのビジネスには何らかのバリューチェーンがあることが通常です。

そのバリューチェーンと顧客とを見つめることで、様々な課題が浮き彫りになってきます。その課題を自社技術や新たに創出したアイデア・技術で解決することが「技術を活かす」ことにつながりますが、ここで更にもう一つの観点を入れると「市場」との結びつきも考慮されることになります。

例えば、SDGsの目標に、上記で浮き彫りにして見出した課題が合致するかどうかを考えることが有効な場合があります。SDGsの目標と合致するということは、大きな市場でのプレゼンス確保のチャンスが高いということを意味するからです。

SDGsは既に公表されており、企業への適合方法も色々と事例が公表されています。そのため、大きな市場において自社がプレゼンスを確保できるにもかかわらず、そのための武器を持っておかないと、同業他社に先を越される場合も想定されます。

つまり、チャンス(機会)を見つけたとしても、そのチャンスを生かすためのツール(知財)がないとチャンスを最大限活かせないかもしれません。

単に知財に要する費用を抑えることを優先し、知財の蓄積を怠ったり、アイデアの見える化をせずにアイデアを放置したりすれば、時間の経過によって逆にリスクが一気に見えるようになってしまう可能性もあります。

喩えて言えば、おいしい作物を実らせるには、しっかりと土を耕すのと同様、知財もしっかりとその土台に投資をしておく必要があるということです。

やせた土地からおいしい作物は実りにくいのと同様、「土地を耕す」際には、知財の知識、知財と経営との関係性等を理解している人材が必要になります。

その人材を社外に求めてもよいのですが、理想は社内の人がそのような人材になることです。

そのためには時間がかかりますが、社内人材を知財人材にするために、外部の知財人材と協働して行くことが有効な1つの手です。

社内人材が育つと外部の知財人材の出番が少なくなるのでは、という点も少なからずありますが、環境・社会は常に変化しており、その変化のすべてを把握することは社内人材のみでは難しいので社外の視点を持った人材もそれなりに需要はあるのではないかと思います。

社外人材は、そのような観点から、社内人材に対して貢献できるのではないでしょうか。

結局、知財は消耗品と違い「息が長い」ので、上記のようなことを考える必要があります。

今知的財産事務所

甘いものにも・・・


コンビニに行くと、毎日のように新作の甘いモノが置いてあります。時々買って帰りますが、「これはうまい!」と思ったものが次に行くともう置いてなかったりして、商品同士の争いがかなり激しいようですね。

こういったお菓子にも様々な特許があります。

例えば、「和風洋生菓子の製造方法とその包装方法」という名称の特許(特許第2893529号)があります(現在は存続期間が満了しています。)。

「組み合わされる内包材の素材と外包材の素材の性質を十分に考慮しつつ、前記和風感覚の洋生菓子を製造する方法とその包装方法を提供する」ためになされた発明に関する特許で、例えば、「餅生地が途中でちぎれてしまったりすることなく、容易に柔らかい気泡入りクリームを柔軟な薄厚の餅生地シートで包み込むことが出来る」菓子を製造できるようです(上記特許の特許公報の段落【0013】、【0055】等参照)。

この特許にも知財高裁で平成22年(行ケ)第10028号審決取消請求事件という事件がありました。

この事件は、原告が上記特許に対して特許庁に無効審判を請求したところ審判請求が成り立たないという審決が出たので、この審決の取り消しを求めて提起した訴訟です。結果としては原告の請求が棄却されています。

様々な点が争点になったのですが、判決では「引用発明における被覆材が被覆する対象は,餡(具)であり,引用例には,饅頭,おにぎり,アンパンを製造する点が例示されているのみで,具体的な具の例示はなく,気泡入りクリームを包む点についての記載はない・・・気泡入りクリームを包むこと自体は,公知であった・・・しかしながら,引用例には,気泡入りクリームを包む点の記載はないのであるから,菓子の製造において,気泡入りクリームを外皮により包むことを選択することの契機は十分とはいえない・・・引用発明において,餡(具)としてその他のものが採用できることは選択的事項ではあるが,具体的な開示はなく,素材の一例にすぎない気泡入りクリームを内容物として選択することの契機は,更に当該気泡入りクリームに詰め具材を配置することはともかく,それ自体として十分とはいえず,当業者にとって容易であるということはできない」とされています。

気泡入りクリームを包むことが上記特許のポイントの1つだったようですが、気泡入りクリームを包むこと自体が公知であったとしても、特許をつぶすために用いようとする引用例に記載がない場合、気泡入りクリームを用いることができる「論理」がないとならないということですね。

こういう裁判例は、拒絶理由への反論の際の論理構築や、異議申立や無効審判の時の攻撃若しくは防御の際の論理構築の際に勉強になりますね。

こういった甘いお菓子でも、水面下でいろいろと争いが生じたりしています。「新作」をつくる際、他者の権利にはしっかり目配りする必要があります。

今知的財産事務所
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プロフィール

【弁理士】今 智司

Author:【弁理士】今 智司
今(こん)知的財産事務所の所長ブログです。2011年1月に独立開業しました。知財はビジネスに役立たせてこそだ!と考え、技術、デザイン、ブランドの知財複合戦略を考えています。

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